社会学的概念3:都市・地域
○ 社会学的概念3:都市・地域
□ 都市と農村の比較研究
◇都市−農村二分法:
→地域社会を都市と農村に分類し、各々の特質を対比的に把握
ex)ソローキン・ジンマーマン「都市と農村(1929)」
→職業・環境・規模・人口密度・同質性・社会移動などの指標を用いて
都市と農村の特質を対比
◇都市−農村連続法:
→都市と農村を連続的な変化の延長上で把握
ex)レッドフィールド「ユカタンの民俗文化(1941)」
→メキシコ・ユカタン半島にある人口規模の異なる4つの地域社会を
比較し、各々の社会的文化的特徴に連続性を見出す
□シカゴ学派の人間生態学研究
・20C前半:シカゴ学派の人間生態学…生態学の視角を人間社会に応用
→都市:慣習などに基づく秩序を喪失した「実験室」
1)地域構造論:
◆バージェスの同心円地帯理論
→都市拡大によって生じる空間的分化を図式化(シカゴ)
・中央業務地区…周囲に高架鉄道(ループ)/ダウンタウン
・推移地帯…下宿屋・軽工業の工場/スラム/移民第1世代
・労働者住宅地帯…移民第2世代の工業労働者・商店従業者
・住宅地帯…高級アパート・独立家族住宅
・通勤者地帯…郊外・衛星都市
⇒同心円地帯論を批判・修正する研究も
◆ホイト/Hoyt,H.の扇形(セクター)理論
・地代の高い地帯は同心円的ではなく、扇形に展開する傾向
・工業地域は交通機関に沿って立地する傾向
◆ハリス/Harris,C.D.とウルマン/Ullman,E.C.の多核心理論
・都市には歴史的に形成された複数の核が存在
→それらを中心に土地利用の型が決定される
2)アーバニズム論
◆ワース/Wirth,L.「生活様式としてのアーバニズム(1938)」
・都市を人口規模・密度・異質性といった生態学的変数で定義
⇒都市がもたらすアーバニズムを経験的に把握
▼社会組織におけるアーバニズム:
・第1次的接触の衰退・第2次的接触の優位
・親族の紐帯の弱化・家族の社会的意義の減少
・近隣社会の消失 ・所得や地位による階層分化
▼パーソナリティと集合行為におけるアーバニズム:
・統一性を欠いたパーソナリティ
・神経の緊張 ・コスモポリタリズム的な態度
・マスメディアを通じたステレオタイプ操作やシンボル操作
→それによる大量の人間の動員
⇒アーバニズム論、都市の社会関係・意識に関する仮説として
研究課題を提示する役割も
◆フィッシャー/Fischer,C.S.の下位文化理論
・都市の人口の規模・密度・異質性
⇒下位文化の多様性→それを強化し普及していく効果
=逸脱・発明等を生む「非通念性」が都市に浸透
□新都市社会学
◇新都市社会学…1970年前後に登場し、シカゴ学派の都市社会学を根本的に批判
◆カステル/Castells,Mのシカゴ学派都市社会学批判
・アーバニズム論の都市…資本主義的産業化・合理化が進んだ社会
→今ここにある都市という対象の把握に失敗
・人間生態学の視角…都市化を規定する資本主義や国家を無視
⇒都市社会学が研究すべき「都市的なもの」=集合的消費過程
・都市における労働力の再生産:
…国家が供給する様々な消費手段に依存
→配分の不平等・財政危機など新たな問題
⇒新都市社会学:資本主義というマクロな社会構造の中で都市を把握
=資本・国家と労働者の間の社会運動が都市空間を形成
※現代の課題:グローバリゼーション・情報化と都市との関連
□日本の都市と地域社会
◇戦前期日本の地域社会:
◆1890年代:産業革命の進行→産業都市の形成
※東京の人口:
・戊辰戦争直後に減少
→が、その後農村から若年男性・零細農民が流入
⇒19C末には大幅増加
◆1920年代:重化学工業化・大都市の人口増加
◇高度経済成長期の地域社会:
◆1950年代:朝鮮戦争の特需で日本経済が復興
・重化学工業への設備投資を背景に急激な成長
・1950年に就業者全体の半数を占めていた第1次産業就業者の比率が急速に低下
・大規模な地域移動/3大都市圏の人口急増/ドーナツ化現象が鮮明に
⇒農家と他産業就業者との間に所得と生活水準の格差生じる
◆1961:農業基本法…農業の生産性向上・所得格差是正
→家族農業経営の自立経営化目指す
⇒が、農業機械の導入・生活様式の変化により
所得増加を迫られた農家の兼業化・兼業就労の困難な地域の過疎化
※都市への大量の人口流入による過密問題:
…社会的共同消費手段の未整備、公害問題
⇒1960〜70年代前半:住民運動が各地で発生
→革新自治体も多数誕生