■論点:憲法と安全保障を問う
・木村草太(首都大学東京教授)…1980年生まれ・憲法学者
・井上達夫(東京大大学院教授)…1954年生まれ・法哲学者
○安保法制
・自衛権行使の3要件
・1:日本の存立が脅かされ、
国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある
・2:その危険を排除するために他に適当な手段がない
・3:必要最小限度の実行行使
・2014年7月:解釈変更を閣議決定、安全保障関連法に盛り込む
・1の前提に加え、「日本と密接な関係にある他国への攻撃」も発動要件とする
→存立危機事態…集団的自衛権行使に道を開く
○憲法9条
◆井上:
・護憲派の憲法学者の区分
・原理主義的護憲派…自衛権を認めない
・修正主義的護憲派…自衛権を認めている
・井上の立場:原理主義的護憲派と同じ
・9条1項…自衛権を否定していない
・9条2項…自衛のためでも一切の武力行使を禁止している
◆木村:
・9条の解釈は井上と同じ
→が、9条の例外を定めた条文と憲法13条を解釈可能
→国民の生命、自由、幸福追求の権利を保護する義務が日本政府にある
※集団的自衛権は根拠づけられない
→日本への主権侵害の着手がない段階での武力行使のため
◆井上:
・戦力の保有・行使の禁止という重要な憲法規範の適用除外を、
明文化されていないのに13条に読み込むのは法解釈として暴論
→憲法解釈がこじつけ合戦になる
・戦力を保有するならその組織編成と行使手続きの条件といった戦力統制規範は憲法の中で定めるべき
※基本的な安全保障政策の選択は、立法過程で行うべき
・軍隊を持つのであれば徴兵制も加えるべき
→政府が自衛権を乱用した場合、国民が一番悲惨なリスクを負う状況に置かなければ、
国民が無責任な好戦感情にかられたり、政府が非常に危険な行動をしても無関心になってしまったりするため
・9条により戦力は憲法上存在しないことになっているため、戦力統制規範をいまの憲法に盛り込むことが不可能
・「9条のおかげで戦後日本は平和になった」というのは護憲派の欺瞞
→戦後日本はベトナム戦争・イラク戦争で米国の侵略戦争に、軍事拠点を提供することで加担
→日本が侵略されなかったのは9条のおかげではなく、自衛隊と日米安保によるもの
⇒9条削除論の主張はショック療法的
・次善の策として「新9条論」:
→個別的自衛権の範囲ならば自衛隊・日米安保は認めるよう憲法に書き込み、かつ戦力統制規範も入れる