憲法6:司法権
□司法権【76条1項】の範囲と限界:
・裁判所の主たる任務…具体的な争訟について法を適用しかかる争訟を解決する国家の作用
1)司法権の範囲:
→司法権…日本国憲法では民事と刑事、行政事件の裁判権
※明治憲法下では民事と刑事の裁判権のみ
・特別裁判所…明治憲法下で存在したが、現行憲法では禁止(憲法76条2項前段)
→「前審として」は許されている
・具体的争訟(事件性の要件)
→一切の法律上の争訟を裁判(裁判所法3条1項)とあるが司法権は具体的な事件についてのみ行使
[判例]警察予備隊違憲訴訟(最大判・昭27・10・8)
→司法権が発動するには具体的な争訟事件が必要と判旨
・宗教上の問題と司法審査:
[判例]板まんだら事件(最判・昭56・4・7)
→宗教上の教義に関する判断は法律上の争訟にあたらない
2)司法権の限界:
・議員資格争訟の裁判【55条】
・議院の自律権に属する内部事項(懲罰や議事手続等)
[判例]警察法改正無効事件(最大判・昭37・3・7)
→裁判所の審査権は国会両院の法律制度の議事手続の効力を判断
・団体の内部事項に関する行為(部分社会の法理)
[判例]議員懲罰の司法審査(最大判・昭35・10・19)
[判例]大学の在学関係と司法審査(最判・昭52・3・15)
[判例]政党の内部自治と司法審査(最判・昭63・12・20)
3)裁判官の罷免:
・裁判所による罷免(分限裁判)…心身の故障などによる職務不能の場合
・国会による罷免(弾劾裁判)…著しい職務義務違反・職務懈怠など
・国民審査 (※最高裁判所裁判官)
4)統治行為
…高度の政治性を有するために裁判的審査の対象とならない国家行為
[判例]苫米地事件(最大判・昭35・6・8)
→衆議院の解散は司法審査の対象となるか
⇒高度に政治性のある国事行為には審査権及ばない
[判例]砂川事件(最大判・昭34・12・16)
→日米安保条約の違憲審査
□裁判所の構成
◇裁判所の組織
・最高裁判所の裁判官の構成について規定【79条1項】
・最高裁判所長官およびその他の裁判官14人【裁判所法5条1項と3項】
・最高裁判所長官…内閣の指名 → 天皇が任命【6条2項】
・その他の裁判官…内閣が任命【79条1項】 → 天皇が認証【7条5号】
※下級裁判所の規定【裁判所法2条】
→下級裁判所の裁判官…最高裁判所が指名 → 内閣が任命【80条1項前段】
□違憲審査権
1)憲法の最高法規性を担保するため
2)国民の基本的人権を守るため
◇違憲審査の性格
◆付随的違憲審査制:
→具体的争訟の解決にあたり、その事件に適用される法令およびその他の国家行為の合憲性を
その事件の解決に必要な限度で審査する制度
⇒当事者の権利を侵害しないように(私権保障型)◆抽象的違憲審査制:
→特別に設置された裁判所が抽象的に法令の合憲性を審査する制度
⇒違憲の法律を排除するねらい(憲法保障型)
[判例]警察予備隊違憲訴訟(最大判・昭27・10・8)
◇違憲審査の主体
→下級裁判所も含む(前審として)
[判例]下級裁判所の違憲法令審査権(最大判・昭25・2・1)
※終審として裁判することはできない
◇違憲審査の対象
→条例、判決も含む
[判例]違憲審査の対象・処分に関して(最大判・昭23・7・8)
⇒問題は条約と立法不作為
・条約:条約優位説と憲法優位説
→簡易な手続(憲法61条)で成立する条約で憲法が改正される懸念
[判例]砂川事件(最大判・昭34・12・16)
→条約の違憲審査
・立法不作為:審査は原則及ばない
[判例]在宅投票制度事件(最判・昭60・11・21)
→立法不作為◇違憲審査の効力
・個別的効力説…当事件のみ(学説)
・一般的効力説…その規定が廃止されたのと同様の効果