09/08/29 論断時評 農業新時代と政治

○大規模化超え新段階へ



松原隆一郎(社会経済学者)
◇農業:
 ・就業人口…08年:299万人 ※1965年:1151万人
  ・うち専業…戸数16%
  ・基幹的従事者の平均年齢…64.6歳
  ・耕作放棄地…38.6万ヘクタール ※埼玉県に匹敵
 →農業、数字上は衰退産業



自給率
 ・カロリーベース…40%
 ・生産額ベース…66%



衆院選での「農政」という争点:
 民主党
  ・「戸別所得保障」…生産費>売り上げで赤字がでた場合、その差額を農家に直接支給
    ※赤字を国が補填…市場経済においてはモラルハザード
 自民党
  ・「米の生産調整(による価格維持)」を堅持する姿勢



 ■大泉一貫:
  自民党が強気に出られない理由:
    →07年度参院選の大敗を「米価が上がらないから」「米地帯で負け」と総括
     ※この直前、将来的に高い関税率を手直しして米の市場開放化を受け入れても
       「地域農業を担う、意欲と能力のある担い手」に限定して
       国内価格低下の打撃分を直接に支払うとしていた
  ・両党にとっての農業…価格競争に耐えられない
    →多くが市場競争からの保護を求める後ろ向きな存在



◇が、農業へ別の光が当たりつつある
 ・専門月刊誌「現代農業(農山漁村文化協会)」…雑誌不況の中、売れ行き伸ばす
 ・ビジュアル誌「Agrizm(農業技術通信社)」…新創刊
 ・「BRUTUS(マガジンハウス)」…09年2月で農業特集
 →農業に前を向く可能性を見いだす



 ■川上康介:
  ・最近の就農ブーム…自然に寄り添う暮らしが非サラリーマン的充実もたらすから
    →大規模営農・企業営農優先の施策だけでなく、
      小規模農家・家庭菜園レベルの広がりにより助成・投資を

   

◇政治の場での注目:米についての市場開放化or自給率
 ・解決方法:
  ・国内米価を国際価格よりも安くする
  ・輸入に頼らず自給率を上げ、余った分を輸出に回す



 丹羽宇一郎(伊藤忠商事会長):
  ・10〜15ヘクタール規模の田ならば、米をキロ当たり160円まで下げること可能
    →中国で作っている105円の米と競うこと可能
  ・農地法を改正し土地をまとめ大規模化し、農家に前向きの経営マインドを持たせるべき
  →企業的な論理、農業の構造改革



◇大規模化による効率化の限界:
 ■大澤信一:
  ・効率化…画一化とほぼ同義で、個性的で少量生産の商品の印象を薄くする
  ・大規模化…対外競争のための条件で、成熟した食市場では効果薄
  ・各地で賑わう農産物直売所:
    →生産者が消費者の評価を直接知ること可能
    →「手応え」「食べごたえ」という根源的リアリティ(感動)を与え合える
     ⇒兼業・高齢・女性がその主な担い手になれる
       ※農業構造改革では働き盛りの専業農家を想定
   ex)愛媛県今治市・直売所「さいさいきて屋」:
     →定年退職後の20年間、帰農して年金プラスアルファを稼ぐというビジネスモデル



◇大規模化と脱サラ農業・直売所:
 ・大規模化…グローバリズムに高関税以外で対抗しようとする政治的方法
 ・脱サラ農業・直売所…政治の先を見晴らしたものか