09/04/30 憲法と自衛隊
○インタビュー・福島重雄さん
□福島重雄・現弁護士:
・1930年生まれ
・長沼違憲判決の元裁判長
・「長沼事件 平賀書簡 35年目の証言」(日本評論社)
□長沼訴訟:
・北海道長沼町における航空自衛隊のナイキ地対空ミサイル基地建設に伴う
保安林指定解除処分が争われる
・原告…地元住民
→憲法違反の自衛隊基地のため指定解除は公益上の理由を欠くと訴える
・1973年:札幌地裁・一審判決
→憲法前文を根拠に平和的生存権の裁判規範性を認める
→自衛隊は憲法9条により保持禁じられた「戦力」にあたる
⇒原告の訴えを認める
※平和的生存権:
・憲法前文を根拠に「平和を享受する権利」とする考え方
・積極説…「新しい人権」として認める
・消極説…理念を謳ったもの/裁判規範性を認めない
・1976年:札幌高裁
→代替施設の完備により原告らには訴えの利益がなくなったとし却下
※自衛隊の憲法判断には踏み込まず
・1982年:最高裁
→高裁と同様の理由で上告を棄却
※自衛隊の憲法判断には踏み込まず
▽戦後憲法下で「自衛隊」は認められるのか
※インタビュー
・1973年:長沼訴訟一審判決…「違憲」
※08年4月:名古屋高裁が自衛隊イラク派遣を違憲と認定
・当時の裁判所の態度:
→「統治行為論」…高度に政治性のある国家行為について司法は判断権有しない
・70年代初め:戦前の旧憲法のもとで裁判官をやってきた人たち
→定年退職で姿を消していく
⇒やがて「我々の時代」になるという感覚
・憲法問題、特殊な問題ではない
→参考にした人物・考え方
・憲法:小林直樹・東大教授
・国際法:田畑茂二郎・京大教授
・憲法:宮沢俊義・東大名誉教授
・裁判所が憲法判断を回避
→自衛隊の実態と憲法をめぐる議論が国民の間に広がらなかった一因
⇒合憲・違憲問わず、裁判所は証拠に基づき判断を示し、
それを積み重ねることが法治国家の姿・三権分立の基礎・民主主義の根幹
・次世代へのメッセージ:
→それぞれ自分なりに日本社会がどうあるべきかどう行くべきか考えてほしい
⇒そのためには過ぎ去った歴史上の事実もしっかり知ることが必要
▽福島元裁判長の日記から:
▼1969年7月23日:長沼事件担当に
・長沼の事件は確かに法律を越えた政治問題が絡んでいる
・今までの裁判所は自衛隊の憲法9条問題を避けてきた
→だが、いつかはどこかで誰かがやらなければならない問題
※もっとも純然たる観念訴訟は許されまい
▼1969年8月14日:平賀健太・札幌地裁所長から書簡が送られる
・内容:「長沼事件は国側の勝訴になるはずである」
→その結局いかんにかかわらず明らかな裁判干渉
▼1970年10月9日:長沼事件の証拠調べに
・第1回口頭弁論からちょうど一年
・自衛隊の違憲問題に本格的に取り組む姿勢を見せる
→所長・政府、狼狽/最高裁まで変調
▼1973年5月3日:憲法記念日(26回目の)
・長沼訴訟は従来の裁判の本質を国民が知り、それを元の姿に戻そうとした最初の訴訟
▼1973年9月7日:判決当日
・やはり反響はすさまじい
▼1973年9月20日:
・何も新しい法解釈・法理論の展開をしたわけでも、
また困難な事実認定を明快に裁いたわけでもない
→あたりまえのことをあたりまえのように判決しただけ