財政学2:経費論

○ 財政学2:経費論




□経費の生産性
  ・経費…生産的(社会経済の維持・発展に貢献)とみるか、
      不生産的(社会経済の維持・発展を阻害)とみるか学説二分


 ◇経費の生産性に関する諸学説:
   1)スミス(Adam Smith):
      →経費は政治的には有用であるが、経済的には不生産的⇒「安価な政府」
   2)リスト(Friedrich List):
      →法律・制度は直接に価値を生産するものではないが、無形の生産力を生産する
   3)ワグナー(Adolf Wagner):
      →国民経済の発展に不可欠な非物質的財貨を生産するための経費は生産的とみなされる
   4)ケインズ(John Maynard Keynes)ら:
      →不況下で生産促進的に作用する不生産的経費もあれば、
       好況下でインフレを助長させる生産的経費もある



 ◇非移転的経費と移転的経費:
   ・非移転的経費…人件費・物件費として要素市場・生産物市場から財・サービスを購入する支出
             →国内支出であれば直接に有効需要を喚起
   ・移転的経費…内国債元利金、補助金社会保障給付等、
          財・サービスの購入ではない、対価なしの現金支出
             →どれだけの部分が消費支出・投資支出に回されるかで経済効果異なる



□経費膨張に関する諸見解:
  ◇ワグナー(Adolf Wagner)の「経費膨張の法則」:
    ・政府の活動が従来の機能を内包的に拡充し、新たな機能を外延的に付加
       →経費膨張
    ・競争により社会的摩擦が激化
       →円滑な市場経済運営のため「法および権力目的」の経費増大
    ・教育や社会保障関係事業に対する「文化および福祉目的」の経費増大
  ◇ティム(Herbert Timm)の「タイム・ラグ」仮説:
    ・公共サービスに対する需要は、その増加するペースが所得の増加ペースに比べ
     遅かったり、一定の所得水準到達後に急な増加を示す
       ⇒経費は国民経済の発展とともに一律に膨張せず段階的に膨張
  ◇ピーコック(Alan T.Peacock)=ワイズマン(Jack Wiseman)の「転移効果」:
    ・戦争や社会的混乱を機に経費が膨張した後、それらが終息しても
     経費水準が戻らず、高水準が維持される過程が繰り返される



□公共財
 ◇公共財の概念:
   ◆公共財…消費における非競合性(ある人の消費が他人の消費を妨げない)
        排除不可能性(ある人をその財の消費から排除できない)
          ⇒共同消費が可能で、排除原則が働かない財
            =交換の対象とならず、市場が成立しない
         ※排除原則による料金化を行わないことで必要時に皆がこれを利用し、
          大きな外部経済が期待されるものも含む ex)消防

  非競合性 競合
非排除性 純粋公共財(警察・国防) 準公共財(混雑している道路)
排除可能 準公共財(有料道路) 私的財


   ◆純粋公共財…社会の全構成員に無差別・無競争的に供給・共同消費・等量消費
            ex)国防、治安維持等
   ◆準公共財…排除性が貫けない漏出(スピル・オーバー)の性質を持ちながら一応の排除性を伴う財
            ex)教育や地域限定的社会資本等




 ◇公共財の問題…個別報償性原理に対立する一般報償性原理に基づく供給
           =無償かつ強制的な供給   ⇒「ただ乗り」・「強制された乗客」


 ◇公共財の最適供給条件:
   ◆公共財だけの世界:
     …公共財の供給による社会の便益とそれにかかる費用との差(純便益)が最大
        →公共財の供給による限界費用(MC)と
         公共財の供給による社会の限界便益(MB)とが等しくなる
   ◆公共財と私的財とが混在する一般的状況:
     …公共財の限界的な購入とそれに対応した私的財の購入の減少による
      「効用の増加と減少」がつりあったとき消費者の効用が最大
       ・公共財と私的財の限界代替率(MRS)…公共財の限界便益
          …公共財の限界的購入のために犠牲にしてもよいと消費者が考える私的財の量
       ・公共財と私的財の限界転換率    
          …公共財の供給を1単位増やすために
           私的財を何単位犠牲にしなければならないか表したもの


  ⇒公共財の最適供給条件:
    …公共財と私的財の限界代替率の和=公共財と私的財の限界転換率
      ※サミュエルソンの条件:


   →この枠組みの中での均衡条件の達成
     ・リンダール均衡:
       …与えられた租税負担等を前提に消費者が自分の純便益
        最大化する公共財の水準を計算し、政府に報告
         →政府、最適水準に関する多くの報告をもとに
          すべての消費者が報告する公共財の最適水準が同じになるまで
          各消費者に対する租税負担等を調整


□市場の失敗
    ・完全競争市場では、市場での競争を通じて効率的な資金配分達成
       ⇒現実経済では、完全競争の条件×
         →市場の失敗…市場が効率的な資金配分を実現できないケース


  ◇外部効果(外部性)
     →ある経済主体の行動が、市場を経由しないで他の経済主体に影響与える
    ◆外部経済(他の経済主体に好ましい影響与える):
        ex)無償のボランティア活動、美しい庭が隣人に与える満足
    ◆外部不経済(他の経済主体に好ましくない影響与える):
        ex)騒音、排気ガス等の環境汚染


  ◇外部経済の内部化
    ・外部不経済が存在する時、生産量を1単位増加させるのに必要な社会的限界費用
       →私的限界費用に市場を経由しない限界外部費用を足したもの
          ⇒私的限界費用+限界外部費用=社会的限界費用
    ・政府が社会的なコストを企業に負担させるために外部不経済分の税金(従量税)を課せば、
     社会的に最適な資金配分が達成される(=外部経済の内部化)